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「まったくもう。人使いが荒いんだから」
職員室のドアをピシッと閉めて、ひとりで愚痴る。
放課後、帰宅部のあたしに担任が雑用を頼んだ。あたしのイライラの原因はそれがすべて。
放課後はあたしにとって大切な時間。
毎日の日課、グラウンドに面している教室から部活中の加賀の姿を見る。ただそれだけだけど、恋する乙女にとっては幸せなひとときで。
廊下の窓から顔をのぞかせるともう6時なのにまだまだ空は明るかった。さすが夏。ありがとう夏。
これならまだ、加賀の姿を目視できる。
…はやく教室もどろ。
いつもの定位置から加賀のこと、見るんだ。
遠くからだから技術的なものとか、怒られてる内容とかはまったく分からないけど。
ただ、見ていられるだけで十分。

