「な?に…?」

訳が分からず驚いている千歳に鳴海は、静かに口を開いた。いくぶん、いつもと違うトーンの声で…

「…やっとその気になった?」

「へ?」

何ごとが起こったのか…訳は分からずとも、鼓動は勝手に早くなっていく…

「いやならすぐ、ほどけるよ…力入れてないから」

小さな声で鳴海がささやく。千歳の背に回された腕は、ふわりと置かれているだけだった。

「いやではない…ケドね」

ケド、いったいどうしたのだろう?

千歳は混乱してきた。

いつもは自分から(色々訳あって)抱き着くことはあっても、鳴海から抱き着いてくるのは初めてだった。

いったい何が起こったのか…まさかね…

それはありえないと千歳は打ち消す。

だって鳴海は同級生で、うちのバイトで、そうゆうんじゃないしねぇ…

千歳がのんびり考えごとをしている間に、鳴海は静かに動いた。

ソファーの上に千歳をゆっくり倒すと、千歳が何か言う前に口をふさいでしまったのだ。自分の口で…