「ただいま」 玄関のドアを開けても、明かりはついていなく、俺以外の人の気配もない。 俺は施設で育った。 両親は俺が小さいときに交通事故で死んでしまった。 顔は覚えていない。 ただあるのは2人が笑っている写真のみ。 親戚が引き取ってくれるわけでもなく、施設へ入れられた。 このひとり暮らしも叔母さんが強いたものだ。 厄介者扱いされながら暮らすよりは全然まし。むしろこっちがいい。 ふいに、ポケットの中の携帯が小刻みに震えた。