それから、毎日いつ寝ても目が覚めるとチョコムースが枕元に置かれていた。いつもひんやりしていて、でも食べると心が暖かくなる。


「勝くん、今日も間違えたの?」


「そうだな…。」


「そうなんだ…。ありがとう!」


毎日、毎日間違えたと平然と言っている、勝くんがいじらしい。


お母さんや和斗や舞さんがいないときは、よく私のそばに勝くんが来てくれて話をした。

勝くんが退院するまであと一週間だ。


「勝くん…。」

「ん?」

「この前、どうしていいかわかんなくなるからムカつくって私に言ったでしょ?」

「あぁ…。俺不器用だから…。」

「ふふっ。知ってるよ。手先は器用なのにね。」

私が笑うと、勝くんは目を細めた。

「もしかしてさ…。レンと出会った日私にムカつくって言ったのも心配してくれてたから?」

上目遣いに聞く。









シンッと静かな病室で窓の外の風の音がやけに大きく聞こえる。













しばらくしてから、勝くんは口を開いた。

「俺、不器用だからあいつみたいに言いたいことうまく言えない。それでお前を…傷つけてたんだろうな…。」


まつげを伏せ少し寂しげな表情で…。

勝くんはレンより身長も大きくて、男の子ぽいのにどこか儚い感じがする表情をする。

その、儚い陰りが彼を苦しめている気もした。



だから…。

私が言わなきゃ…。

勝くんが私を安心させてくれたように安心させなきゃ…!





「私、わかってるよ…。

勝くんが不器用で誰よりも誰よりも優しいこと。最初は怖い人だなって思ってた。

でも、違うんだなって気がつけてよかった。

勝くんのいいところをたくさん知れてよかった!

私すごく幸せ。だから、心配しなくって大丈夫だよ!」

にっこりする私に、勝くんは驚いたような表情を一瞬見せ、照れ臭そうだった。





「ありがと」


勝くんに素直にお礼を言われて、嬉しくって恥ずかしくってむずがゆいような気持ちになった。