え…。



そんなの知らなかった…。


    『美しい空』

私の心に響いた。

「それ、ほんとに?私、大切なの?いらない子じゃないの?」


「あたりまえよ」

泣きながら、お母さんは私の頬に触れた。

「あなたは、私達の大切な子供よ。あなたも、あなたの弟達も同じくらい大事なの。美空、不安にさせてごめんなさい。生まれてきてくれてありがとう。」


お母さんは優しく微笑む。


私は、涙も感情も一気に溢れだす。

「私、ずっと、ずっと、怖かったの…。
お父様にもお母様にもいつか見放される気がしてビクビクしてた…。

でも
お父様にもお母様にも会えなくて寂しかった。

弟達は私のこと一度も名前を呼んでくれなくて、お姉ちゃんって認められてない気がしてた。

いつも、不機嫌なお母様が怖かった。

たまにしか会わないお父様が恨めしかった。

私…。私…。」

これ以上は涙がこぼれて、嗚咽が交えて、言えなかった。

「美空、大丈夫。弟達はね、本当はお姉ちゃんって呼びたくてしかたないのよ。

でもね、あの子達は恥ずかしがり屋だから、あなたの小さい頃にそっくりなの。

きっと甘えてくれる日が来るはずだから。だってあの子達にとってあなたは世界で一人のお姉ちゃんだもの。」

お母さんがニッコリとする。


「美空、我慢しないで言いたいこと言ってよかったのよ。
家族なんだから。さみしい思いさせてごめんなさい。お母さんもっと会いに来るから。お父さんもどんなに、仕事忙しくてもこれからは、来るから。美空、これからはもっと一緒にいましょう。」


あぁ。お母さんの手温かい。



「美空、チョコレート好きだったろ?」

お父さんが小さな箱を取り出す。

え?お父さん覚えてたの?

お父さんとは、小さい頃からまともに話した記憶がない。

ううん。お母さんとも、こんなにも話したのは人生で今日が初めて。なんだか、変な気分だ。

「ありがとうございます」


私は、ニッコリ微笑んだ。

お父さんもお母さんも笑い返してくれる。


あぁ。私って愛されていたんだ。



大切にされてたんだ。






私達って家族なんだ。