「梨乃。何を言っているんだ!?」

「だって、そうじゃない。
左利きのくせに右で使うなんてありえない。
そんなのプライドがない証拠よ!!」

それは……

胸がズキッと痛む。
そんなつもりはないのに……。
まさか右が使えることに対してあんな風に思われる
なんて思わなかった。私は……ただ。

「梨乃。いい加減にしろ!!
一ノ瀬さんに失礼だろ」
怒ってくれる池上さん。しかし私の心は、
傷ついたままだった。

ショックのあまり、そのまま飛び出して行ってしまう。

「一ノ瀬さん!?」
池上さんの呼ぶ声が聞こえたけど
無視をしてしまった。

走りながらも涙が溢れて止まらない。
息を切らしていてよろめくと誰かにぶつかってしまった。

「す、すみません……」

「い、いや……こちらこそ。って……あれ?
一ノ瀬さん!?」
ぶつかった相手は、柏木さんだった。

まさかの相手に驚きと動揺をする。
よりにもよってこんな時に……何で会ったのだろうか。