私は、一ノ瀬明里。

私は、子供の頃。
躾に厳しく頑固な両親から何度か
言われたことがある。
主に母親だが……。

『また左手を使って。
行儀が悪いからやめなさい!!』

『大人になった時に正式のマナーで困るから
早めに直しなさい』

私は左利きだった。
古い考えの両親や祖母は、何とかして
直させようと赤ん坊の頃からずっと右利きに
直そうとする。

私は、それに対して疑問に思っていた。
何でダメなの?

左手の方がやりやすいのに……
何がいけないの?

だが、直さないと怒られるため嫌々やり直した。
そのお陰か右手も使えれるまでになるが
やっぱり利き腕の方が使いやすい。

だから大学入学して一人暮らしを始めた時は、
まさに天国だった。
気がねなく自分のやりたいようにやれる。
うるさく言われなくて済むと喜んだ。

そんな生活を続けて数年。
私も大学を卒業して社会人となった。
就職先は、大手電機メーカーのOL。

新しい友人も出来て
大変ながら充実した生活を送っている。
そんな私にも密かに想いを寄せてる先輩が居る。

「ねぇねぇ、明里。
柏木さんが居るわよ!?」