飛べない翼

「……知っての通り、僕はさっちゃんの担当カウンセラーです。ですから、さっちゃんの過去については、知っています」


ビクッ、と体が跳ねた。


新米はそれを気付かない振りをして、目を伏せて、続ける。


「さっちゃんは”あの一件”で心を閉ざし、歩けなくなった。けれど、さっちゃんに非は一切なかった筈ですよね?」


知らない。


そんなの、知らないっ。