「早く手を出してくれないと、俺の手、惨めなんだけど」
ほら、と催促してくる。
そりゃあ、好きな人と手を繋ぎたいとは思うけど、自分の年齢を考えると躊躇ってしまう。
昔、私が酔った時に手を繋がれたことはあったけど、今と状況が全然違う。
葛藤の末、私が出した答えは。
「すっごい恥ずかしいんだからね」
照れくさいのを誤魔化しながら右手を出せば、満足そうに笑って手を握ってくる。
「いつも澄ましたような顔ばかりしてたのに、こんなに照れてる唯香は初めて見る。可愛いな」
私の顔を覗き込んで、さらに赤面するようなことを言う。
もう、ホントにやめて欲しい。
手を振りほどこうとしたけど、逆に指を絡ませて握ってきた。
「無駄な抵抗は止めて、素直に繋がれとけ」
イタズラに笑いながら強引な言葉を紡ぐ。
そんなことを言われたら、悔しいけど完敗だ。
朔斗がバーのドアを開ける。
手を繋いだまま外に出ると、太陽はゆっくりと傾き夕暮れの気配を滲ませている。
並んで歩く二人の影が伸びる。
これから親に挨拶に行くとか、あまり実感がない。
だけど、私たちは着実に未来に向かって一歩踏み出した。
end.



