朔斗のことを好きだと自覚してからは、彼氏がいたことはない。
少なからず、出会いもあったけど、揺らぐことはなかった。
だから、こんな風に自分の想いが叶うことなんてないと思っていた。
朔斗は抱きしめていた腕を緩め、私の頭に手を置いた。
「見合い成立だな。それじゃ、お前の家に挨拶に行くか」
「え、挨拶?」
「そのために今日はスーツを着てるんだから」
展開の速さについていけない。
唖然としている私にさらに言葉を続ける。
「最初はさ、見合い相手を代わってもらうことに和也さんは難色を示していたんだ。中途半端なことをして唯香を傷付けたら許さないと。だから、俺が唯香のことを本気で考えていることを伝えて納得してもらった。今日をきっかけに唯香を口説き落とそうかと思っていたんだけど……まさか、唯香が俺のことを好きだとはな」
私の顔を見るとフッと笑い、しみじみと言う。
改めて言われるとすごく恥ずかしいものがある。
「唯香を手に入れた今、俺なりの誠意を見せないといけないだろ。今日はけじめをつける日だったから」
朔斗はそう言うと、ワイシャツの袖を捲る。
そして、食べ終わったケーキのお皿とティーカップをトレイにのせ、カウンターの奥に行く。
洗い物をしているのか、水の音が聞こえ始めた。
私は落ち着かず、どうしたらいいのか分からなかった。



