まだ、りっくんには返事をしていない。
答えは決まっているけど、気分的に昼より夜に話したかった。
そこは自分勝手だなとは思ったけど。

頭の中でそんなことを考えていたら、朔斗は私にとって残酷な言葉を投げ掛けた。

「唯香、明日の見合いはちゃんと行けよ」

「えっ」

言葉が出なかった。
信じられないような気持ちで朔斗を見る。

普段と変わらない表情に、冗談ではなく本気で言ったんだということを理解した。
感情が高ぶり、冷静さを失った。

「どうしてそんなこと言うの?」

思わず、声を荒らげる。

「どうしてって、おばさんが唯香の花嫁姿を見たいって……」

「そんなの朔斗には関係ないじゃない!酷いよ。朔斗にだけは言われたくなかった」

言葉を遮り怒りをぶつけた。

何が悲しくて好きな人にお見合いを勧められないといけないの?
朔斗は私が他の男の人と結婚すればいいと思ってるんだ……。

辛くて胸が張り裂けそうだ。

「朔斗に私の気持ちは分からないっ」

荷物を手にスツールから降りた。
ドアを開けると雨が激しく降っていたけど、そんなのお構いなしに飛び出した。

「おい、唯香っ」

背後から聞こえた朔斗の声を無視して走り出す。