「私が来なかったらどうしてたの?」

「そりゃ、電話して呼ぶに決まってるだろ。お前の為に貸し切ってんだから。呼ぶ手間が省けてよかったよ」

どうしよう、すっごく嬉しいんですけど。
朔斗が私の為に貸し切りにしてまで誕生日を祝ってくれるなんて思ってもいなかった。

朔斗はカウンター越しではなく私の隣りに座った。

そして、シャンパングラスにシャンパンを注ぎ、手渡してくれた。

「誕生日おめでとう」

「ありがとう」

グラスをカチンと合わせ、シャンパンを口に含む。

こんな風にしてくれるなんて初めてのことでドギマギしてしまう。

今年は、私が今まで生きてきた中で一番幸せな誕生日かも知れない。
私は完全に舞い上がっていた。

夕食に朔斗お手製のオムライスを食べた。
一番好きなメニューを覚えてくれていたことも嬉しくて顔がニヤけた。

軽く世間話をしていたら、突然、朔斗が思い出したかのように「あっ」と声を出す。

「そういや、明日は見合いなんだろ。和也さんから聞いた」

「えっ……」

一気に冷や水を浴びせられた気持ちになった。

まさに、天国から地獄。
どうしてお兄ちゃんはそんな余計なことを話してるの?

驚きと怒りと動揺といろんな感情が混ざり合う。

何とか平静を装い、何でもないように答える。

「……うん、そうなの。ホントは行きたくないんだけど、お母さんがうるさいから」