お兄ちゃん、最後は自分の感情が入ってるんですけど。

お兄ちゃんに相談している時は、『もうちょっと頑張ってみる』と繰り返していた。
自分でもまだ続けられると思っていた。

でも、次第にやせ我慢も辛くなり、限界間近になっていた。
そんな時、バーに行ってお酒を飲みすぎた。
そこで朔斗に言われた“ギリギリまで我慢することはない”の言葉が心にストンと落ちてきた。

お兄ちゃんも同じようなことを言ってくれていたけど、決断するまでにはいかなかったんだ。


『話が横道にそれたけど、好きな人がいるのに見合いをしてもいいのかって聞いているんだ』

正直、お兄ちゃんに自分に気持ちがバレているのはこの上なく恥ずかしい。
兄妹でこんな話をしたくないんだけど。

「いいの。朔斗は私のことを何とも思ってないのは知っているしね。さっきも言ったけど、お見合いしたら絶対に結婚しないといけない訳じゃないし、会うだけ会えばいいかなと思って」

『唯香がそれでいいなら俺はもう何も言わないけど。後悔しないようにするんだぞ』

「うん、分かった。お兄ちゃん、電話してきてくれてありがとね」

『礼なんていいんだよ。何があっても兄ちゃんは唯香の味方だからな』

私のことを気にかけて、連絡してくれたことが素直に嬉しかった。

再度、感謝し電話を切った。
スマホの時計を見ると、バスの停留所通過時間が迫っていて、急いでバス停に向かった。