教室の窓際に立ち、何度も深呼吸する。

誰もいない教室は静まり返っている。

それはそうだろう。
二年の生徒なんて卒業式が終わればもう用はなく、さっさと家に帰るだけだし。

廊下を歩く足音が聞こえ、私の教室のところでピタリと止まる。

ガラッとドアが開き、先輩が教室に入ってきた。
心の中で先輩をここまで呼んでくれたミヤに感謝し、私はすぐさま駆け寄って謝罪した。

「西田先輩、突然こんなところに呼び出してすみません」

「いや、構わないけど」

ゆっくりと頭を上げた時、私の視線は制服を捉えた。

うちの高校の制服は男子は学ランだ。
先輩の制服にはボタンが全部ある。

それを見てホッと胸を撫で下ろす。

改めて先輩と向かい合うと足が震え、緊張はピークに達していた。
きっと先輩もこのシチュエーションは告白されるであろうということが分かっていると思う。

ギュッと拳を握り、気合を入れる。

「私は新藤唯香っていいます。あの、先輩のことがずっと好きでした。もしよかったらでいいんですけど、制服のボタンをもらえますか?」

一気に言い切り、ドキドキしながら返事を待った。

「あ、ボタン……。俺のでいいなら」

先輩は照れくさそうに制服のボタンに手をかけた。