西田陸と出会ったのは私が高校一年の時。

彼は私の一学年先輩で、目立つグループの中の一人だった。
と言っても、彼はその中でも控えめな存在で、いつもグループで歩いている時は後ろの方にいた。

遠い存在で、見ているだけでよかった。

でも、先輩が卒業する日に、もう会えなくなるんなら思い切って告白しようかなと一大決心をした。

告白と言っても思いを伝えるだけ。
付き合いたいとか、そんなことは全く考えていなかった。

せめて記念に制服のボタンをもらえたら、なんて思っていた。

卒業式が終わり、卒業生たちが写真撮影や名残惜しそうに友達や先生たちと話をしていた。

それをこっそり眺めながら、話しかけるチャンスを狙っていた。
でも、なかなか一歩が踏み出せず。
このまま諦めて帰ろうとしていたら、友達のミヤが私を引き留めた。

「私が先輩を呼び出してあげるから、自分の気持ちをちゃんと伝えなよ。どうせ当たって砕けても、先輩に会うことはないんだから大丈夫だって!」

そうだよね、もう先輩と二度と会うことはないんだし。
ミヤの言葉にウジウジしていた気持ちが吹っ切れ、私は頷いた。

“当たって砕けても”という言葉が引っ掛かったけど。


「二年五組、私らの教室に先輩を必ず連れて行くから」

「うん、分かった。じゃあ、頼んでもいい?」

ミヤは了解とばかりにガッツポーズをした。