「お見合いか……」

「え、お見合い?唯香さんお見合いするんですか?」

「ちょっと美優ちゃん、声のボリュームを下げて」

私の呟きを聞いてしまった美優ちゃんが驚きの声を上げる。

患者さんが一人いるけど、今は治療中で受付のスペースには誰もいない。
大声で話す訳ではないので、仕事中でも世間話をすることはある。

私に注意され、バツの悪そうな顔で謝る。

「すみません。それでお見合いってどういうことですか?」

「お母さんが見合いしろって」

「いつなんですか?」

「この日曜……」

「えー、すぐじゃないですか!相手はどんな人なんですか?」

「それがまだ詳しくは聞いてないの。うちの近所の知り合いの息子ってだけで」

ため息をつきながら言う。
ホント、我が親ながら呆れてしまう。

「それって大丈夫なんですか?変な相手だったら……」

美優ちゃんが心配そうに言う。

「まぁ、うちの親が薦めるからそこまで変な人じゃないと思うんだけどね」

そう言いながらも、不安だらけだった。

正直、親にはいろいろ迷惑をかけた。
無理言って大学まで通わせてもらって、いい企業に就職したと思ったら上司とのトラブルで辞めてしまって。

何も親孝行らしいことはしていないから、あまり強く逆らえない自分がいる。