そのお皿にはスモークチーズとサラミがのせられている。
これは私がビールを飲む時のお決まりのおつまみだ。
チーズを手でつかみ、口の中に放り込む。
しばらくして、ケチャップの香りがして私の前にナポリタンのお皿が置かれた。
「お待たせしました」
このバーのナポリタンには目玉焼きがのっている。
手を合わせ「いただきます」と心の中で言う。
半熟の目玉焼きをフォークでつつくと、トロリとした黄身が流れ出る。
それをパスタに絡めフォークで口に運ぶ。
黙々と食べ進め、お皿の上にフォークを置いた。
「ごちそうさまでした」と手を合わせていたら、女性客と朔斗の会話が耳に入ってきた。
「ねぇ、朔斗ってフリーでしょ。今度デートしようよ。私、いい店知ってるの」
その言葉に思わず視線を向けた。
女の人が朔斗の左手を握り上目遣いで誘っている。
「魅力的なお誘いですが、お客様とはプライベートで会うことはしてませんので」
口もとに笑みを浮かべ、握られていた女性の手に自分の右手を添え断っている。
嫌な気分にさせず、然り気無く手を払ったり、断り方もスムーズで感心する。
「もう、ケチね。じゃあ、お客とバーテンダーって関係じゃなくなったらいいの?」
なおも食い下がる女性に朔斗は微笑みかける。
「私にはお客様のような綺麗な人は勿体ないです」
「ホント、口が上手いんだから」
断わられてもまんざらではない様子の女性に若干の苛立ちを感じた。



