「来たか、神林!橋高!朝からベロチューもいいが、大変な事態が起こった!」
「ぶ、部長!見ていたのですか!?」
「なんだ、本当にしていたのか!恥ずかしい奴だな」
「ほ、本題に入ってください……」
「チコからのメッセージが届いた。これは各国の首脳に送られているそうだ」
部長はノートパソコンのディスプレイを示した。
ディスプレイには時計がカウントダウンを続けており、残り時間5日20時間11分40秒と表示されている。
「部長!これは何です!?何のカウントダウンなんだ!」
「神林……、橋高もこれを聴け」
部長がマウスを操作して、動画ファイルを開いた。それはウェブ上にアップロードされたものを、保存したもののようだった。
「私はチコです。お久しぶりです、日本の皆さん」
ここで一度部長は動画を止めた。
「チコ!」
「ああ……。聴け」
「もはや私の言葉は神の箴言となりました。この神の言葉があなたたちに向けられて発せられていることに、あなたがたは感謝しなければなりません」
くそったれめ、と神林は思った。
「私はかつてあなたがたと同じ一族でした。だから、あなたがたの存在を許容してきました。同じ一族だったことで、あなたがたに情けをかけ続けていたのです。しかし私は考えたのです。あなたたち、本当にそれが日本にとって正しいことなのかと。私は考えた末に、そうではないと悟ったのです。日本を遅刻の自由な国にします。私ならできることはおわかりのはずです。かつて日本国政府は私の提案を独断で、受け入れられないとしました。しかし私の力で日本を正しい国へと導くことこそ、日本のあるべき姿であると、確信したのです。遅刻のできる、優しい国へと進むことこそ!」
「や、野郎!」
「なんてことなの!」
神林と橋高が叫ぶ。
チコは続ける。
「チコは、提案します。今度は日本の主権者、つまり日本国民すべてに対し提案します。自らの意志で、チコを受け入れなさい。それを決定するまでの期間は6日間とします。期間が過ぎた時、チコを受け入れない場合は、私の力で、日本を遅刻のできる優しい国へと昇華させることになります。どうか自らの意志で、チコの世界を受け入れてください」
動画はこれで終わっていた。
「こういうことだ」
「ちくしょう、あいつ……」
橋高が言う。
「本気……なんでしょうか?」
「そこなんだ。チコは前回の日本国政府の時は、日本を許している。このことから、必ずしもこのメッセージが本気であるとは言えないんじゃないか……。いや、世界に発信していることから、脅しではないという見方もできるがな……。ここまで宣告しておいて、『気が変わった、やりません』では神の威厳というのもなくなる……」
「橋高、部長、ドラクエはやりましたか?やったことがありますか?」
「何を食えだって?神林。お前は何を言っているんだ。つくづく思っていたが、お前という男はものごとに対し真剣に捉えているようで自分の思い思いにやるところが…」
「あーいい、いい!そんな話じゃないです。橋高はあるな?」
「4がベストだと思ってるの」
「部長、ゲームがあるんです。敵と戦って経験を積んで、レベルを上げて強くなって、敵を倒すゲームが!」
「そ、そっか。それがどうした?神林」
「橋高……」
「う、うん」
「デスピサロをザキで倒そうと思うか?」
「……あっ!」
「そういうことなんだよ」
「……おい、どういうことなんだ。神林、説明してくれ」
「ゲームには、敵を殺す呪文というのがあるんですよ。いちいち、ダメージを与えて倒すんじゃなく、一発で殺してしまう呪文がね。必ずしも効くわけじゃないけれど、そういう戦法もある。普通、ゲームの最後の敵にはこの呪文は効かないんですよ。効いてしまったら、あっけないし面白くないでしょう?」
「一撃で倒せるならその方がいい気もするが……、実際にはそうなのだろうな」
「チコの野郎が考えていることも同じことなんです。きっと。遅刻ノートさえあれば、あっという間に日本を遅刻の国にすることができる。でもしないのはなぜか?それだけ日本に思い入れを持っているんですよ。きっとそうだ。強引に遅刻ノートを使うのではなく……それはデスピサロに対するザキみたいなもので、できることなら使いたくないんです。できるなら……、日本の意志で、遅刻だらけの生活に入ってほしい。チコにとってそれが勝利なんです」
「話が、わかりかけてきたみたいだな」
橋高が再び口を開く。
「今のチコの考えでは……、日本がチコを認めたら勝ちで、遅刻ノートで無理やり日本をチコの支配下に置くことは、チコの負け……?」
「おそらくな」
「ぶ、部長!見ていたのですか!?」
「なんだ、本当にしていたのか!恥ずかしい奴だな」
「ほ、本題に入ってください……」
「チコからのメッセージが届いた。これは各国の首脳に送られているそうだ」
部長はノートパソコンのディスプレイを示した。
ディスプレイには時計がカウントダウンを続けており、残り時間5日20時間11分40秒と表示されている。
「部長!これは何です!?何のカウントダウンなんだ!」
「神林……、橋高もこれを聴け」
部長がマウスを操作して、動画ファイルを開いた。それはウェブ上にアップロードされたものを、保存したもののようだった。
「私はチコです。お久しぶりです、日本の皆さん」
ここで一度部長は動画を止めた。
「チコ!」
「ああ……。聴け」
「もはや私の言葉は神の箴言となりました。この神の言葉があなたたちに向けられて発せられていることに、あなたがたは感謝しなければなりません」
くそったれめ、と神林は思った。
「私はかつてあなたがたと同じ一族でした。だから、あなたがたの存在を許容してきました。同じ一族だったことで、あなたがたに情けをかけ続けていたのです。しかし私は考えたのです。あなたたち、本当にそれが日本にとって正しいことなのかと。私は考えた末に、そうではないと悟ったのです。日本を遅刻の自由な国にします。私ならできることはおわかりのはずです。かつて日本国政府は私の提案を独断で、受け入れられないとしました。しかし私の力で日本を正しい国へと導くことこそ、日本のあるべき姿であると、確信したのです。遅刻のできる、優しい国へと進むことこそ!」
「や、野郎!」
「なんてことなの!」
神林と橋高が叫ぶ。
チコは続ける。
「チコは、提案します。今度は日本の主権者、つまり日本国民すべてに対し提案します。自らの意志で、チコを受け入れなさい。それを決定するまでの期間は6日間とします。期間が過ぎた時、チコを受け入れない場合は、私の力で、日本を遅刻のできる優しい国へと昇華させることになります。どうか自らの意志で、チコの世界を受け入れてください」
動画はこれで終わっていた。
「こういうことだ」
「ちくしょう、あいつ……」
橋高が言う。
「本気……なんでしょうか?」
「そこなんだ。チコは前回の日本国政府の時は、日本を許している。このことから、必ずしもこのメッセージが本気であるとは言えないんじゃないか……。いや、世界に発信していることから、脅しではないという見方もできるがな……。ここまで宣告しておいて、『気が変わった、やりません』では神の威厳というのもなくなる……」
「橋高、部長、ドラクエはやりましたか?やったことがありますか?」
「何を食えだって?神林。お前は何を言っているんだ。つくづく思っていたが、お前という男はものごとに対し真剣に捉えているようで自分の思い思いにやるところが…」
「あーいい、いい!そんな話じゃないです。橋高はあるな?」
「4がベストだと思ってるの」
「部長、ゲームがあるんです。敵と戦って経験を積んで、レベルを上げて強くなって、敵を倒すゲームが!」
「そ、そっか。それがどうした?神林」
「橋高……」
「う、うん」
「デスピサロをザキで倒そうと思うか?」
「……あっ!」
「そういうことなんだよ」
「……おい、どういうことなんだ。神林、説明してくれ」
「ゲームには、敵を殺す呪文というのがあるんですよ。いちいち、ダメージを与えて倒すんじゃなく、一発で殺してしまう呪文がね。必ずしも効くわけじゃないけれど、そういう戦法もある。普通、ゲームの最後の敵にはこの呪文は効かないんですよ。効いてしまったら、あっけないし面白くないでしょう?」
「一撃で倒せるならその方がいい気もするが……、実際にはそうなのだろうな」
「チコの野郎が考えていることも同じことなんです。きっと。遅刻ノートさえあれば、あっという間に日本を遅刻の国にすることができる。でもしないのはなぜか?それだけ日本に思い入れを持っているんですよ。きっとそうだ。強引に遅刻ノートを使うのではなく……それはデスピサロに対するザキみたいなもので、できることなら使いたくないんです。できるなら……、日本の意志で、遅刻だらけの生活に入ってほしい。チコにとってそれが勝利なんです」
「話が、わかりかけてきたみたいだな」
橋高が再び口を開く。
「今のチコの考えでは……、日本がチコを認めたら勝ちで、遅刻ノートで無理やり日本をチコの支配下に置くことは、チコの負け……?」
「おそらくな」

