濡れないところまで移動しながら、冷静になってそれぞれに持ち物をチェックする。
「あーあ、かばんずぶ濡れだよ、七海ちゃん。中身大丈夫?」
「人のこと言えないですよ、大地さん。携帯とか平気ですか?」
「俺のは胸ポケットだから」
言いながらも、大地さんは心配そうにポケットを覗き込んで無事を確認している。
「でも財布がやばい。流れてかなくてよかったけど」
と濡れた革財布をお尻のポケットから出して見せられた。中まですっかり濡れてしまったらしく、これは大変そう。
私のバッグは下のほうが着水してもはやスカイブルーではなくグレーじみていたけれど、幸い中身は無事だった。
一応荷物を一つずつ全部出して、バッグの中が濡れていないか確認してみる。
「食べ物外に置いとかないで、ほんと危ないから」
大地さんが空を警戒しながらコンビニの袋を取り上げて言う。そんなに危ないのか、トンビって。
「何にもなかったよね、何でこけたの」
財布を振って水気と砂を飛ばしながら、ついでのように聞かれる。
「砂がぐにゃっとして見えて」
自分で言いながらも嫌だなあと思う。また幻覚? でもさっきのは本物っぽかった。
「貝だかカニだか、いたのかもなぁ。まあこの程度で済んでよかったか」
確かに。携帯がやられてたらまずかった、お互いに。でも塩水でどちらも服も身体も濡れてしまった。
風邪はひかなそうな天気だからすぐ乾きそうではあるけれど、塩気があって後からべたべたしそうだ。
ペットボトルのお茶を飲んで、口の中の塩気を追い出す。水を飲んだというほどじゃないけど、口の中がしょっぱくなっていた。
笑いすぎて忘れていたけれど、私、先輩をこんなに巻き込んでおいて、謝ってすらいない。


