しばらくその場で波を追いかけたりしてるうちに、本当に冷たさに慣れてきた。どちらからともなく走り出して、水をぱしゃぱしゃ跳ねさせて波打ち際を走って行く。

何やってんだろう、でも楽しい。

「あ、あそこに!」と叫んで、振り向いた大地さんの横をすり抜けながら「何もいませんでした!」と言って走り抜ける。

やった、一歩リード。



追いつ抜かれつ調子に乗ってパタパタ走っていたら、目の前の砂が急にぐにゃっと動いた気がした。

うわっと思って避けようとしてバランスを崩した。前に倒れるって思ったとき、後ろから腕を引かれる。私が立ち直った代わりに前のめりになった大地さんを支えようと手を伸ばしたら、何がどうなったのか目が回った。

結局、振り返りながらしりもちをついた大地さんの上に、私が正面から重なるようになって、二人とも水際に着水した。

私は両手をついたから濡れたのはスカートの裾だったけれど、大地さんは脚からお尻まで濡れてる。

うわ、顔が近い。

目が合った瞬間、時々来る大きめの波がタイミング悪くやってきて私たちをさらに水浸しにして、ざざーっとバカにするように引いて行った。

大惨事。

なのについ、二人で同時にふきだした。なんなのこれ。なんのコント?



浅く砂まみれの海水に埋まったまま、お腹が痛いくらいひとしきり笑った後、大地さんが助け起こしてくれた。