サヨナラも言えずに訪れる別れは心に鉛玉を残す。

だから、事有る毎にサヨナラを言う弱虫な私。

「サヨナラまた来年も飲むのだ。」

ってな具合。

愛してるぞぉと真奈美に抱きついて見る。

歩道にはまだ人がいて、こっち見てるけど構うもんか、この面覚えとけ。

そしたら、急に予想外の力で真奈美にぎゅぅってされた。

「あたしも、愛してるよん。」

ありゃ、キスされた。

うふふ、気持ちええ。

「お前ら大丈夫か?」

相澤が笑っている。

「妬くな相澤もこっちゃ来い。」

あはは、私、酔ってます。

居酒屋の後、何件行ったかな?

でも、もっとこうして居たい。

何でかな、今日は帰りたくない、なんてたちの悪い女みたいな事が頭よぎる。

くにゃりと口をwにして笑う奈々が一緒にいるみたいで。

それが、今だけの魔法みたいに思えて。

だけど、タクシーの集まる駅方面に向けて歩く。

明日を迎えなきゃ、何と無くでも良いから。

同じ所に居たくても、時間は過ぎていくから。

ああ、言葉が足りなくてもどかしい。

こんちくしょう。

相澤がタクシーを捕まえた。

「ほれ、みづき先に乗れ。」

タクシーに相澤が行き先を大雑把に告げ、私が細く補足する。

二人はまたタクシーの捕獲にかかる。

「バイバイ、また飲もう。」

窓を開けて手を振ると二人も振り返してくれる。

私は走りだしたタクシーのリアガラス越しに、二人が見えなくなるまで後ろを向いていた。