「おいっ、着いたぞ。」と隣の坂本に肩を揺らされた。

「うん…」
領はハードな撮影スケジュールですごく疲れていた。

「今日は遅いから、家まで車で送るし、明日は休みだからゆっくり休めよ。」

「うん。わかった。」

「明後日からは、すまないがずっと休みがないと思っといてくれ」

「うん。」あまりにも疲れていて反論できなかった。

領は車の中で、ちひろのやさしい声が聞きたいと思いながら、また眠りについた。

深夜12時を回った頃に自宅に着いた領は、暗い部屋のソファーにもたれすぐにちひろへ電話をかけた。

すぐにつながった。

「おかえりなさい。」
領は一番聞きたかった声がきこえ、なんだかとてもほっとした。

「ただいま…今、大丈夫?」

「大丈夫です。」
家族はもうみんな寝ていた。
少しの会話で、ちひろには領の疲れている様子がとてもよくわかった。

「俺…今すごく…会いたい…」

「えっ。」

「ちひろさんに会いたいなぁ…」

「ありがとう。」

「ちひろさんは?…」

すぐに答えるべきか、迷った。少し間があり領へ伝えた。

「……本当は会いたい。」
「……」

「領くん!?」

「……」