ピアスの秘密

「明日は実家で、父と母と3人でパーティーをするの。父が喜んでたわ。」

「そう。それはよかった。お父さんによろしく。」


「それが、昨日電話したときに京子をイブに一人にして、まさか女じゃないだろうなぁ…って言うから、仕事の打ち合わせよっていったの」

「もちろん仕事だよ…」

「京子を裏切ったら、離婚だ。会社から追い出してやる。っていってたわ」

「それは怖いなぁ」
平静を装いおどけてみた。

すると京子の顔から笑みは消えこう続けた。

「あなたは私と結婚して松本の名前にかわり、松本グループの後継ぎになれたの。何もかもがうまくいくのは大きな父の力があるから、けして階段を踏み外さないでね。」

息がつまるような感覚だった。
「わ、わかってるよ。いつも感謝してるし、そんなバカなことはしない。」

「ならいいのよ。いただきましょう。」

と京子は視線を料理に向けた。

松本はやっと呼吸ができるような気がした。

そして悲しかった。

こんな思いをしながらも、里香とは終わりにしようとすぐに決めた自分に。

この生活は捨てられない。里香も望んでいない。

素敵な特別料理も、味がわからなかった。