ピアスの秘密

年が明けた。
今日から仕事始め、里香はベッドの中にいた。

「しばらく出社しなくていい。後日連絡する。」

「わかりました…」

社長からクリスマスイブの日に言われた言葉。

私はいったい何をしてしまったんだろう。
そして、イブに約束の場所へ松本は来なかった。携帯もつながらない…

きっと松本さんが関係しているにちがいないが、連絡がとれないうえ、私が探し歩いたら関係をばらしているようなもんだ。

せっかく手にいれた店長という地位には、もう戻れそうにない…

松本さんに会いたい…

いったい何が起こったのか…

12月23日の夜
一流フランス料理店

「1日早いけれど、メリークリスマス!」

「そうね。メリークリスマス!」

松本と妻の京子はグラスを傾けた。

「あなたと結婚して、初めてイブを一緒に過ごせないわね。さみしいわ…」

「京子…ごめん。どうしても断れない仕事なんだ。おわびのしるしに、これ奮発したよ。」
と、真っ赤なリボンに飾られた小箱があった。

「ありがとう。」
箱を開けたが指輪にふれず蓋をした。

このお嬢様育ちの京子はいったい何を見たら、嬉しく笑うのだろうかといらだった。