ピアスの秘密

悲しくて苦しいと涙を流しながらも、しばらくするとちひろはいつの間にか眠りについていた。

まぶしい朝日と、鳥の声で目を覚まし、止まっていた現実の時間が動き出していた。


日曜日の午前7時過ぎ…

夢を見ていたと思えばいい…自分に言い聞かせ、すぐにベッドから起き出し、朝食作りと洗濯を始めた。
いつもと同じ休日。

動き回らないと、昨夜の記憶をたどってしまう自分がいた。

現実の世界でいつものように生活ができない。

すぐに目を閉じてしまいそうになる…
領の笑顔に会いたい…

大きくなった領への想いを、胸の奥へ奥へと閉じ込めてみる。

それは空気がいっぱい入った風船みたいで、小さくしようとすると、破裂しそうでうまく扱えない。

ちひろの心が今にも壊れてしまいそうになる。
想いがたくさん詰まった風船がうまく扱えない。

平静を装いながらも、起きてきた夫へ声をかけ、朝食の準備をいつもと同じ流れでする。

二人で向き合えない…すると娘たちが起きてきた。子供の顔をみたら動揺は治まった。

明日から子供たちは冬休みが始まる。ちひろが一人で過ごす時間がなくなる。

そう思うと、少しだけほっとした。