ピアスの秘密

ちひろは家族が寝静まった家に帰った。

まだ11時を回ったばかりだが、娘2人に挟まれて寝ている夫をみて、なんとも言えない気持ちになった。

今、顔を合わすことはできない…

一晩寝ると少し気分も落ち着くと思い、急いで自分のベッドへ入った。

もちろんなかなか眠る気にはなれなかった。

本当に信じられない出来事だった。

ネックレスを触り現実だったこと再確認した。

そして真っ暗な部屋で目を閉じると、領と過ごした夢のような時間に吸い込まれていった。

領がキャンドルを吹き消し、綺麗な光が点滅していた…あの部屋。


たとえ心や体が通いあっても先の見えない二人。


領とちひろは、お互いに気持ちを確かめる会話を交わしたりはしなかったけれど、肌の温もりを感じ、それだけでじゅうぶんだった。

鍛えられた引き締まった体に艶やかな肌、美しい顔に綺麗な手、初めは違いを恥ずかしく思ったが、少しづつ自分も綺麗な体になっていくような気がした。

ほんの数時間前の出来事…

今すぐに会いたい、声が聞きたい…

涙が溢れた。

このまま時間が止まってほしい。

彼の居ない明日を迎えたくない…会いたい…