ピアスの秘密

テレビや映画なら、ここに領君が挨拶にくるんだけど、現実はそう甘くない。

ドアがノックされた。
｢はい、どうぞ｣
やっぱり領君ではなく、さっきの男性の一人だった。
｢今日はお芝居を見る予定だったんですよね？｣

｢はい｣

｢今日が楽日でなければご招待できたんですが、本当に、申し訳ありませんでした。少しですがこちらをお持ち帰りください｣と紙袋をだした。

｢はい、すみません。｣私はどうでもよかったが、断る理由も気力もなかった。中はお菓子と、その上にお見舞いと書かれた封筒がのっていた。

本当は領君に会わせてほしいと言いたかったけど、もちろん言えなかった。

｢すみませんが連絡先をこちらにお願いします。｣と言われ、住所、氏名、携帯番号をさっさと書いた。

｢車の用意ができましたのでこちらへどうぞ｣と案内された。

タクシーが一台とまっていて、運転手へ私の住所を伝えてくれた。
そして深々と頭を下げ、関係者5人に見送られタクシーに乗り家に向かった。

運転手は訳ありの客とわかってるいるようで、ラジオをつけ、話しかけないでくれた。
ありがたかった。

大阪の夜景をみながら、今日を思い返し、やっと家に着いた。