東京へ戻ってからも坂本は、領と一緒にいた女性の事を時々思いだした。

あれから領は、今まで通り何もかわりがない。

携帯電話もあまり手にしないし、不可解な行動も全くなかった。

ただ、ミナの雰囲気に似ていたので自分が気にしすぎているんだと思い、ほっとした。

今もツアーの準備でメンバー4人そろって、リーダーの昌也がしきって浩太と直人が意見を出して、領が補足するという、いつもと同じ役割で話が進んでいた。
坂本はそんな4人を眺めるのがとても好きだった。

「領、領、聞いてるか?」と昌也に言われた。

「ご、ごめん。もう一回いってくれ。」領は慌てた。
いたずら好きな直人が
「女の事でも考えてたか?」

「ちがう。ちょと寝不足」と返事をした。

本心を見抜かれて領はドキドキしていた。

ツアーで大阪へ行ったら、ちひろと会うことが出来るか考えていたからだった。
ふとそんなこと考えるなんて、自分でもビックリした。

その後も直人がチラチラみるから、領はきっちりと話しに参加した。

忙しい毎日の中、時々ちひろさんが頭の中にでてくるようになった。

その回数も日々増していると領は感じ始めていた。