2日後、里香は職場で上司に呼ばれた。

「来月7月17日にオープンの3号店の店長をやってみないか?」

「私がですか?」

「顧客の数も増えているし、がんばってみない?」

一瞬いろんな事が頭を駆け巡ったが、

「ありがとうございます。頑張りますのでどうぞよろしくお願いします。」

昼休みにさっきの出来事を思い返していた。

里香は大手エステ会社に努めて6年になる。
18歳で子供を産んだが、夢が諦められなかった。
一人息子が小学校入学と同時に、今の会社でパートをしながらエステティシャンの学校に行った。

夫は2ヶ月前から、九州へ単身赴任中、一人息子も中学生になりサッカーに夢中である。

育児も一段落し、何かに一生懸命になってみたいと、30歳を迎えそう思っていた。
やるとは言ったものの、不安になったが、こんなチャンスもなかなかない、これでよかったと心に決めた。
ちひろからメールが来た。
《こんにちは、一昨日は電話に出れなくてごめんなさい。Fの8月のコンサートの案内がさっき届いたけど、今年も行くよね?》

日曜日の事は何も書いてない。

それよりも仕事の事で今年はコンサートに行く気になれないと思った。