ピアスの秘密

会場をあとにして、駅まで5分もあれば着くのに、今夜は20分かけて歩いた。
私の中で今日が勝負だった。

去年のお詫びとして舞台に招待してこのまま終結する。
それとも、また会える。

私は携帯電話を握り締め、また会えるよう強く願っていた。

ちょうど地下鉄の階段を下りようとしたとき、携帯がなった。

里香からだった。私はでなかった。
舞台を見に来たことは言ってなかったし、今は話せないと言うか、説明する時間も惜しかった。

彼からの電話を待ちたかった。

後5分、後5分と思っているうちに9時15分をまわった。

その時、電話がなった。
青木領と画面に出た。

訳もなく勝った気がした。
「もしもし」

「もしもし青木です」元気な声だった。

「こんばんは、今夜はありがとうございました。」

「いいんです。急なんですけど、今から前と同じところで一緒にご飯たべませんか?」少し慌てている感じがとてもかわいかった。

「わかりました。私も今から向かいます。」

「じゃあ、後で」

「じゃあ。」と私は急いで地下鉄に乗り、家とは反対方向へむかった。

ホテルは3つ先の駅だった。今9時半、あまり時間がないと思った。