そして心の中で、このチケットは領くんが私にくれたんですと、続けて言ってみた。

大人げないと思いながらも、こっそり優越感にひたってみた。

でも、どうして明日の日曜の最終公演日のチケットじゃあないんだろうと、少し残念に思った。

でも私は、あえて彼が今日を選んだ理由が後でわかった。

幕が降りている舞台を眺めながら、ファンの一人として応援することが一番いい、そう決めきた。


今日は領くんをみても、別世界、おとぎの国の王子様と思わなければいけない、そう自分自身に言い聞かせた。

やがて真っ黒になり、いよいよ幕があがった。

彼が中央にいた。

もうその姿をみだだけで、涙が溢れてきた。

私はやっぱり彼が好きだ。
あれほどバカげていると、わかっているつもりだったけど、テレビ画面の中じゃなく、生の彼をみたらすっかり以前の勘違いな女になってしまった。

私を映したその目、時々みせたかわいい笑顔、私と触れた腕、そしてわたしが見つめた横顔、隣にいた彼…

気持ちの整理はついたつもりだったけど、悲しいのか嬉しいのか自分でもわからないのに、次から次と涙が流れた。

こんなはずじゃなかったのに…