ピアスの秘密

彼が振り返るはずがない。
もちろんわかっていたけれど、イヴにこんな素敵な公園に一人ぼっちになってしまった…

彼が悪い訳じゃない。

涙でさっきよりも、イルミネーションがキラキラと輝いてとてもきれいだった。
ほんの数分前まで、私は確実に幸せだったはずなのに。

勝手に一人で舞い上がり、恋に落ちたような感覚を味わい、そして夢から覚めた。
私は一生忘れない、素敵な思い出。

きっとこのシチュエーションが涙を誘っただけだ。

でも、こんな気持ち何年ぶるだろう。
もう少しこの気分を味わっていたいとも思った。

本当に久しぶりに、胸がいたくなった。

私はホテルの最上階を見上げ、今日一日を思い返した。
コンサートがほんの数時間前だったなんて思えないくらい、遠い記憶のよう。

ごくごく普通の主婦には、刺激的でとても長い一日だった。

今この場所で、涙を流している自分が勘違いな女のようで、少し笑えてきた。

それに真剣に思い詰めるわけにもいかない。

彼はアイドル、7つも年下、私はただの一般人、家庭もある。
頭ではわかっている。

大人だからわかっているけれど、もう会いたくて、会いたくてたまらない…