私は大通りに出てタクシーを拾った。
そして車に乗りいろいろ考えた。

見た瞬間がっかりされたらどうしよう。

慌て電話を切り、急いで向かう私をどう思うんだろう。

どうして呼んでくれたんだろ。
とにかく、嬉しいという気持ちの後は、不安ばかりが頭をかけめぐった。

私は目を閉じ深呼吸をして、素敵な女性にみえますように…と、少女のように神様にお願いしてしまった。
そして、とうとうホテルへ着いた。

いよいよだ。

車を降りて、まずパウダールームに行き、コンサートで思い切り楽しんだため崩れたメイクを治したかったが、こんな予想外の出来事で、たいした道具も持ってきていなかった。

髪を直し、口紅だけ丁寧に塗り、鏡に写る自分に大丈夫、大丈夫と小さく声をかけ、エレベーターホールへ行った。

私はあの事件以来、エレベーターに1人で乗っていない。
また今夜も会えなくなるんじゃないかと考えてしまった。

でも、そんな心配はいらなかった。

日曜日の午後7時半、それも今日はクリスマスイブ、エレベーターを待っている2組のカップル、1組の家族がいた。

私はその人たちと同じエレベーターに続けて乗り込んだ。