6月の日曜日、今私は、必死になって大阪Hホールに向かって走っている。
こんなに必死に走ったのは、何年ぶりだろうか…

アイドルグループ『F』の一員、領くんの舞台を見に行くために、今日までこっそり3ヵ月かけて着々と準備をしてきた。


少し大げさになるが、平凡な主婦が子供を主人に預けて出掛けることは、かなりテンションが上がる。


新品の服を来て、美容院にいき、ネイルアートなんかもやったりして、がんばって素敵な女性に変身したような気分になるのが楽しみのひとつでもある。


一人優雅に領君の舞台を見て、帰りにホテルのラウンジでいい女ぶって、一杯だけ飲んで帰るのが予定だった。
久しぶりの一人外出で、イベント前の子供の気分だった。

もちろん、家族の前では不自然と思われる点はあったと思うがいつもの事である。

浮かれているが、なるべく平静を装った。


待ちに待ったその日が今日である。


なのに私は、舞台の開演時間と言うのにやっと地下鉄から地上へ上がり、後100m走らなくてはいけない。


この時、いつものスニーカーでくればよかったかも…と後悔した。


新品のハイヒールは辛い。


やっと建物に着いた。