ピアスの秘密

裏口に回り、領はなれた手順で2つの鍵をあけた。

「入って…知り合いの店なんだ。ここなら誰にも会わないですむから…」

「迷惑かけてごめんなさい。」

「いいよ。はいって…」

店内は真っ暗でタバコの臭いがした。

領は照明と暖房を付けた。ちひろは客席側にまわった。

「お客様、何になさいますか?」と領が笑った。大好きな笑顔だ。

「オレンジジュースで」

「はい、かしこまりました。奥のお席でお待ちください。」

「うん」ちひろはドキドキしていた。

カウンターに8脚丸椅子があり、その奥にソファーのテーブル席があった。

まるで夜、こっそり会っていようだった。

ソファーに座り、深呼吸をした。

コートを脱ぐにはまだ店内は寒かった。

すると領はオレンジジュースが入ったグラスを2つ持ってきて、テーブルに置いた。

そして、そのまま領はちひろの左隣へ座り、強く抱き締めた。

2人は声に出さず、心で会いたかったと感じあった。
「………」

「…きちゃった…」

「…ありがとう…」
と領は微笑み、また抱き締めた。

領の綺麗な瞳をみて、このまま自分が壊れそうになる恐怖を感じながらも幸せだった。