いや、それにしても針金を切る工具がこの屋敷どこを探しても見当たらないのがおかしい。

まるでここの主人は誰かがこの状況になるのを想定していたかのように。

「何かないか?針金を切ることができれば何でもいいんだ!」

物置の奥には斧があった。

持つ部分はだいぶ古くなっていた。刃の部分はかなり錆びている。

針金を切ろうとしたら刃が欠けてしまうのが目に見えている。

その横にある棚には缶詰めや食器を洗うために使う洗剤やトイレットペーパーそれに、大量の古い新聞がある。

一体オレたちを閉じ込めたのは誰なんだ?

その頃、僕たちは探していなかった場所を見て回っていた。

「まだ探していない場所は2箇所です。 それは''1階の奥にある物置''と''2階にある寝室''です」

「つまりその2箇所に何かあるかもしれないってことですね?」

「はい。この2箇所は鍵がかけられて いるので開けることができませんでしたが物置の鍵ならキッチンのから見える場所にありましたからそれを使えば開けることができます。しかし寝室の鍵は見つからないうえに鍵穴が歪んでいます。」

「つまり開けられないってことですか?」

「物置で何か扉を壊すことができる物があればいいのですが。」

そう言ったあとすぐ物置に到着した。

「っ⁉ 扉が開いてる!?」

「えっ⁉ さっきまで鍵が閉まってたんですよね?」

「間違いなかった筈です。 さっき夕食をとる前に探索した時は鍵が閉まっていたんです。」

「それじゃ、誰が開けたんでしょうか?」

「誰かは想像出来ます。きっと笹原くんですよ。」

「笹原くん?」

「彼は扉の針金を切ることを最優先していました。この屋敷はどこを探しても針金を切る工具が見当たらなかったのでここに来たのではなでしょうか。」

「確かにいろんな工具が揃ってそうですもんね。」

物置の中は何のへんてつもなかった。物置の中を探索し始めた。

すぐさま、ある異変に気がついた。

「ぺ、ペンチが見当たりません。」

「ほ、本当ですか?」

「はい。ここまで大工関係の方が使ってそうな工具が揃っているのに初めからペンチが無かったというのは不自然です。」'

「確かにそうですね。それなら誰がペンチを持ち去ったんですか?」

「おそらく''笹原くん''でしょう。」

「''笹原くん''が?」

「断定は出来ません。ただ、」

「ただ?」

「可能性があるだけです。」