そうしてクラス中の視線を浴びながら扉に向かって歩いていると、柚月ちゃんは何かを思い出したように後ろを振り返った。
「伊吹先輩、依先輩お借りしますね?」
パンを頬張った部長は一瞬キョトンとしながらも、黙ったまましばらく柚月ちゃんの顔をじっと見つめた。そして、小さく息を吐き出し、ぽつりと呟いた。
「いいけど。あんまり乱暴に扱わないでね。それ、役立たずでもマネジだから」
その瞬間、私の腕に回されている柚月ちゃんの手にぎゅっと力が入ったような気がしたけど、彼女は「わかってますよ〜」と笑うとさっきよりも少し早足で扉に向かって歩き出した。
「昨日言ったこと覚えてません?
私、伊吹先輩に近づかないでって言ったはずなんですけど。」
「忘れてたわけじゃ、ない、よ」
「じゃあなに?なんで一緒にお昼ご飯なんか食べてんの?」
「いつもの、習慣で」
「なにそれ。本当は伊吹先輩とお昼一緒に食べたいんでしょう?知らないフリして結局自分が一人になりたくないんでしょ?」
知らないフリ?
そんな…。あたしそんなこと思ってないよ。部長と、祠希と一緒にお昼食べるのが楽しいから。だから、一緒に食べてるんだよ。
そう心の中で思うものの、口には出せない。柚月ちゃんの突き刺さるような冷たい視線があたしの口から自由を奪っていた。
「依先輩。柚月の気持ち、分かってますよね?なのに、どうして、知らないフリするんですか?」

