恋ってやつは厄介である




「はぁぁ〜今日も美しい伊吹サマ!」

「祠希くぅーん!いっそ私を殴って…!」

「あのツーショット、遠くから見てるだけでも幸せっ」




あたしの机でパンを頬張る問題児祠希と天使様部長。確かに、このふたりが並ぶと絵になるよね。そしてそこに居る場違いなあたしって可哀想。


クラスメイトの視線は絶え間なくこちらに降り注がれる。
その熱い視線の中に多々向けられる冷たい視線には気づかないフリをして、いつものように楽しい昼食時間を過ごしていた。





「せ〜んぱいっ」



昼休みも終わりに差し掛かった頃、教室に可愛らしい声が響いた。クラスメイトの視線が一気にそちらに移る。


ホッとしたのも束の間、その声の主を見て、お弁当のミートボールを掴むあたしの手が止まった。




「柚月、先輩に会いたかったので来ちゃいましたっ」




てへ、と舌を可愛らしく覗かせ笑う彼女の瞳は一ミリたりとも笑っていなかった。




「…柚月ちゃん」


「おいコラ後輩。2年のフロアは立ち入り禁止だろーが。」


「祠希せんぱぁい、そんな冷たいこと言わないでくださいよぉ。
柚月は、ちゃーんと依先輩に用があって来たんですよ?」


「野崎に用?お前、なんかやらかしたのか?」


「してないしてない。なんで"用事=やらかした"っていう方程式になるのかな」


「もぉ先輩、早く行きましょ?
今日は柚月と約束してたじゃないですがぁ」



掴まれた手首がキリキリと音を立てた。
ほんとに、なんでこんなに力強いのかな。こんなに細くて華奢な体してるのに。