世界はまだ君を知らない




「違いますよ〜!実は元カレ、仁科さんと帰るようになってすぐ姿見なくなっちゃったんですよねぇ」

「え!?そうだったの!?」


そうだったんだ。

予想以上にすぐ引き下がってくれたらしい。まぁ、確かに新しい彼氏が仁科さんみたいな凛々しそうな人だって知ったら、引き下がってしまうかも。



「じゃあ勝負に出るって、誰に?」

「決まってるじゃないですか、仁科さんですよ!」



えっ……えぇ!?

仁科さんに、勝負に出るって……どういう意味!?



「下心とか一切なくて誠実なのが仁科さんだっていうのはわかってるんですよ?けど、本当になにもないんですよ!?」

「あー、確かに仁科店長はちょっとやそっとじゃ落とせないだろうねー」

「家にあがってお茶でも、って誘っても『公私混同はよくない』って断られるし……あの人女に興味ないんじゃないの!?」



す、すごい言われよう……。

仁科さん、梅田さん相手にもペースは変わらないんだなぁ……。けどあの真面目な顔で一線をきちんと引く姿も簡単に想像がつく。



「けど、あそこまで拒否されると余計攻略したくなっちゃうんですよねぇ」



くす、と笑いながら聞こえた声は、いつもの甘い声の中に鋭さを感じる。