世界はまだ君を知らない






それから、仁科さんが梅田さんとともに帰るという日々が一週間ほど続いた。



ふたりが帰る時間を合わせ、まるで恋人のように並んで帰っていく。

そんな光景を目にするたびに、胸が痛い。



私に見せてくれた笑顔や照れた顔を、梅田さんにも見せるのかな。

そう思うと苦しくて、そんな痛みを抱く自分の心がまた図々しく思えて、嫌で。



……うまく、笑えない。

仁科さんに対しても、ぎこちなくなってしまう。





「……はぁ」



そんなある日の午後。店頭で商品のカタログに目を通しながら、私は小さくため息をついた。



どうも仕事に身が入らないなぁ……。

原因など、考えなくてもわかりきっている。仁科さんと梅田さんの姿のせいだ。



今日もふたりは一緒に帰るんだろうなぁ。

こんな気持ちになるなら、自分が引き受ければよかった。けど仁科さんが自ら引き受けたってことは、『スタッフだから』って言いながら、仁科さんも気がないわけじゃないのかも。



あぁ、もう気づくとすぐ考えちゃう……!



「おーい、千川。手空いてる?悪いけど裏から松さん呼んで来てもらえるか」

「あ……はい」



すると少し離れた位置にいた上坂さんからかけられた声に、私は小さく返事をすると、松さんを呼びに裏へと向かう。