世界はまだ君を知らない




「……え?仙台店に転勤になるんじゃ……?」

「誰がそんなこと言った?俺は『仙台店の店長が退職して欠員が出た』としか言ってない。もっと詳しく言えば、それで本社の者がひとり仙台店に転勤になったから、俺が本社に行くことになった、ってことだ」



目を丸くしてたずねると、彼はそう言ってふっと笑う。



あぁ、そっか。つまり、了さんの転勤先は本社で、全て私の早とちり。

けどそれはきっと、彼がそう勘違いするように仕向けたのであろうことで……。



自分ひとりが不安がっていたことに気づき、恥ずかしさに顔が熱くなる。



「っ〜……わざとそんな言い方しましたね……!?」

「人聞きが悪い言い方をするな。わざとじゃない」



絶対嘘だ!

ふてくされその胸をバシバシと叩くと、了さんはおかしそうに笑う。



「意地悪!バカ!嫌いです!」

「悪かったよ。普段翠はわがままも言わないだろ?だから、たまには言わせてみたかったんだ」

「だからって……」



だからって、そんなタチの悪い意地悪をするなんて。

そう続けようとした言葉を遮るように、彼はキスをして唇を塞ぐ。



そして唇を離すと、また強く体を抱きしめた。