世界はまだ君を知らない




「本当は言いたいですし見せちゃいたいですけどねぇ。言って幻滅されるほうがイヤなんです」



いつも自信満々で、彼氏が絶えない梅田さんのその言葉は、なんだかとても意外だ。

けれど、彼女は彼女でコンプレックスを持っているからこそ、隠すためにメイクをして、自分に魔法をかけているのかもしれない。



そう思うと、誰もがなにかと戦っているのかも、と思った。



「だから私は、言わない優しさとか、言えない気持ちとか、あるんじゃないかなって。隠すこと自体を一概に責めるのは違うかなって思うんですよねぇ」

「梅田さん……」



言わない優しさや、言わないんじゃなく言えない気持ち。



確かに、仁科さんが打ち明けてくれたとして、私にはなにが出来た?

遠距離恋愛を選ぶ?

仕事を辞めてついていくことを選ぶ?



……ここで、この仕事をしながら一緒にいたい、という自分の本音を飲み込んで。



けど、『行かないで』なんて無責任なことは言えない。

仁科さんだって、上からの転勤要請を断れば今後の仕事や出世に響いてしまうだろう。

私の勝手なわがままで、彼の足を引っ張りたくない。



……考えても考えても、まとまらない。

私がこうしてどうにもできないことを分かっていたから、仁科さんも言えなかったのかな。



黙っていたことも、彼の優しさのひとつ?



そう思うと胸の奥がぎゅっと締め付けられて、いっそうの切なさを強く感じた。