世界はまだ君を知らない






「……はぁ……」



その夜、閉店後の薄暗い店内で、レジの内側にあるイスに座った私はひとり深いため息をひとつつき天井を見上げた。

目の前には数字の羅列が映し出されたパソコンと、ここ二日分の注文書が広げられている。



時刻は21時すぎ。

閉店時刻を過ぎてからもひとり残っている……というのも、自分の担当である商品の注文書の入力を大きく間違えていたことに閉店間際になって気づいたからだった。



……いくら気持ちが沈んでいるからって、こんなにミスをしていたなんて。

自分のマヌケさにため息が出る。



ダメだ!仕事中は仕事に集中!余計なこと考えない!

そうパンッと両手で頬を叩くと気合いを入れ直し、パソコンに向かった。



けれど、不意に思い出すのは今朝の松さんの言葉。



『好きって気持ちはそんな簡単には消せないんだから』



……そう、だよね。

けど、伝えるべきなのかどうするべきかがわからない。