「おはようございます」
「お。おはよー、千川」
出勤してきた開店前の店内では、上坂さんと藤井さんが開店準備を行っていた。
そんなふたりと簡単に挨拶を交わすと、私は裏のスタッフルームへ向かい、誰もいないその室内でコートを脱いで身支度をする。
いたっていつも通りの朝。
ロッカーのドア内側につけられた鏡で自分の顔を確認すると、唇にはまだ塗って間もないリップが艶めく。
この色も、ようやく見慣れてきたかも。
そんなことを考えていると、不意に部屋のドアが開けられる。
自然とそちらへ目を向ければ、そこにいたのはちょうど出勤してきたところらしい仁科さんだった。
変わらぬ、冷静な表情の彼の姿にドキッと心臓は跳ねるけれど、その動揺を慌てて飲み込み声を発する。
「仁科さん。おはようございます」
笑って言うと、仁科さんはこちらを見てすぐ挨拶を返した。
「……あぁ、おはよう」
「あ、翠くーん、支度終わったらこっちで仕事手伝って!」
「あっ、はーい」
すると、ちょうどそのタイミングで廊下の方から聞こえるのは、倉庫の方にいるらしい松さんの声。
私はそれに応えると、ロッカーを閉じ、急ぎ足で部屋をあとにした。



