世界はまだ君を知らない




「なんですか、仁科さん。もしかして彼女ですかー?赴任早々やりますねぇ」



ニヤニヤと冷やかすように言う藤井さんに、松さんと梅田さんも『あらあら〜』と同じく冷やかすように笑う。



「やだ〜、こんな仏頂面の恋人だなんてお断りだわ〜!」



ところが、彼より先に口を開いたのは私の隣の彼女だった。



ぶ、仏頂面って……。

確かにそうだけれど、仁科さんに対してそんな言い方を堂々とする人を見るのは初めてのことで、その場の全員の顔がひきつる。

その空気を打ち破るように、仁科さんはゴホンと咳払いをひとつした。



「こちら池上若菜さんといってな、去年まで札幌店で働いていた方だ」

「初めまして〜、よろしくね」



彼女……若菜さんは、にこりと笑って手を振る。



愛嬌があってかわいい人だなぁ。けど、札幌店にいた人がどうしてここに?

そう思うと同時に、松さんが「あの」と小さく手を上げた。



「あの、札幌店にいらっしゃった方がどうして……?」



同じことを疑問に思ったらしい。松さんのその問いかけに、若菜さんは笑顔のまま答える。