姿勢を正して見てみれば、そのお客様は女性で、私より10歳近く年上だろうか。茶色く長い髪をおろし、少したれ目がちなかわいらしい顔立ちをしている。
小柄で華奢な体に白いダッフルコートを来た彼女は、ブラウンのハンドバッグを手に辺りをキョロキョロと見回してからこちらへ話しかけた。
「すみません、今日仁科くんっていますか?」
「え?」
仁科くんって……仁科さんのこと、だよね?
仁科さんをたずねて来る人がいること、そして彼を仁科『くん』と呼ぶ人がいること。
それら両方に少し驚ききょとんとしていると、なんともいいタイミングで、ちょうど裏からは仁科さんがやってきた。
「すまない、誰か向こうで手伝いを……あれ」
「あっ、仁科くん!」
こちらを見て目を丸くする仁科さんに、彼女はその姿を見つけた途端ぱあっと表情を明るくして手を振ってみせた。



