世界はまだ君を知らない




「よぉ、翠」

「健吾、なんで……」

「昨日いた奴のひとりが、前にこの店に来たことがあったらしくてさ。お前のこと覚えてたんだよ。まぁ、でかいし分かりやすいもんな」



ニヤ、と不快な笑みを見せながら近づいてくる健吾に、私は険しい顔で睨みつける。



「……なにしに来たの」

「おいおい、せっかく会いに来てやったのになんだよその態度」



私の視線も軽くあしらうようなその態度が、余計苛立ちを感じさせる。



いやだ、ムカつく、不快、それらの気持ちがぐるぐると渦巻くのに、その体をここから追い出すことも出来ない。

それどころか、固まったように動けないまま。

そんな私の心をも見透かすかのように、また一歩近づく。



「昨日も思ったんだけどさぁ、お前少しは綺麗になったよな。あの頃は男にしか見えなくて萎えたけどさ、今のお前なら相手してやってもいいよ」

「なっ……」

「どうせ彼氏なんていないんだろ?あ、ってことはまだ処女?その歳で処女とかやばいだろ」



言い当てる、バカにするような言葉にかっと顔が赤くなる。