世界はまだ君を知らない




その夜。閉店1時間前を迎えた店内で、今日はラストまでの勤務の私は、売り場で次回のセールの準備をしていた。



もうひとりの遅番勤務の仁科さんは、スタッフルームで事務仕事中だ。

ふたりきりでいるのもなんだかまた落ち着かないから、少し距離を置いて仕事をするくらいでちょうどいい。



今日が終われば明日は休みだ。明日1日ゆっくり休んで気持ちを切り替えられたらいいけど……。

ひとりで家にいるのもまたいろいろ考えて嫌になってしまいそうだし、気分転換に買い物でも行こうかな。



そんなことを考えながら、筒状に丸めてあったセールのポスターをたいらに伸ばしていく。

するとその時、店頭からはウィン、と自動ドアが開く音がした。



お客様かな。この時間に来店、となると残業になっちゃいそうな予感……。

そう思いながらも、背筋を伸ばして早足で店頭へ向かう。



「いらっしゃいませ……、!」



ところがそこに立っていたのは、昨日も見た顔……そう、健吾だった。

仕事帰りらしい、昨日同様にスーツを着た健吾は、店内をぐるりと見回してから私に視線を留めると笑みをこぼす。