それから仁科さんは、私が泣きやむまでの間ずっと抱きしめてくれていた。
なにも言わず、聞かずに、そばにいてくれる優しさが、初めて彼と出会った日のことを思い出させた。
あの日あの時からこの瞬間まで、寄り添ってくれている彼。
その温かさに応えたいのに、なにひとつ応えられない。そんな自分が情けなくてもどかしい。
「……川、千川、千川!」
「へ?あっ、うわぁっ!!」
突然呼ばれた名前に、ふと我に返った瞬間。
足になにかがぶつかり、書類を手にしていた私はその場につまずき思い切り床に転んだ。
見れば足元に置いてあった段ボールにつまずいてしまったらしい。勢いよく手放してしまった書類は、スタッフルームの床にバサバサと散らばった。
それを見ていた上坂さんからは、「あーあ……」と呆れたような声が響く。
「だから言ったのに。危ないな、気をつけろよ」
「す、すみません……!」
あぁ、ぼんやりしてた……!
廊下から呼ばれ出て行く上坂さんに、ひとりため息をついて、その場しゃがみこみ書類を拾う。



