広い廊下を抜けて奥の方に入ると、それは豪華な彫刻が施された扉がそびえ立っていた。
「奥様。お食事を持って参りました」
「どうぞ入って」
澄んだ声がドアの向こうから聞こえる。
夏生はゆっくりと丁寧にドアを押し開けた。
それと同時に床から天井まである大きな窓から、すがすがしい夏を呼ぶ風が吹き抜け、部屋のカーテンを揺らす。
「いらっしゃい夏生」
活気に満ちた目と優しい笑顔。
夏生はそれらに魅せられながらワゴンカートを押し進めた。
「奥様お座り下さい。今用意致しますので」
窓の傍にある白い椅子に座るよう奥様に促し、食事をテーブルに広げる。
ここからなら、美しい庭園を眺めながら食事をとることができる。
出かけることの少ない奥方様への夏生のちょっとした気遣いであった。
「どうぞお召し上がり下さい」
「ありがとう」
奥様はにっこり微笑むとナイフとフォークを手に取った。
だが、何か考え込んだ様子でいっこうに食べようとしない。
「あの…何かお気に召さないものでもございましたか?もしそうならば…」
「んー気に入らないって訳じゃないけど…」
奥様はそう言いながらも少し困った様子で料理をじっと見つめている。
自分は何かまずいことでもしたのだろうか。
「夏生、朝食はもう食べて?」
「い、いえ…使用人達はいつもお二人が食べ終わってからで…」
それが主人に対する礼儀であり、それは夏生も同じであった。
だがそれの何が気にくわないのだろうか。
夏生は勇気を振り絞って訊いてみる。
「何か僕が奥様にとって悪いことをしたのでしょうか?」
「そうね…悪いことね」
夏生の質問にすぐ言葉を返す奥様。
しかし、それとは裏腹にいつもの笑顔を向ける奥様が夏生にはよく理解できなかった。
頭の中が真っ白になる夏生をよそに、奥様は話を続けた。
「この料理、私には少し量が多いのよ」
「へ?」
「私は朝は食欲がなくて、あまり食べられないの。だからせっかく夏生が持ってきてくれた料理を残すことになる。でもそれって夏生に対してすごく失礼でしょう?」
夏生は安堵と呆れの混ざったため息をついた。
全くこの御方は。
「奥様。僕は使用人です。ですから貴女様が食事をお残しになられても僕への失礼にはなりません」
「でも使用人への礼儀だって大切にしなければ」
きっぱり言いきる奥様に返す言葉がなくなってしまった夏生は少し困惑した様子で言った。
「では僕はどうすればよろしいでしょうか奥様」
「私と一緒に朝食を食べてくださらない?夏生」
にっこりと笑う奥様に夏生は一礼する。
「仰せのままに」
「奥様。お食事を持って参りました」
「どうぞ入って」
澄んだ声がドアの向こうから聞こえる。
夏生はゆっくりと丁寧にドアを押し開けた。
それと同時に床から天井まである大きな窓から、すがすがしい夏を呼ぶ風が吹き抜け、部屋のカーテンを揺らす。
「いらっしゃい夏生」
活気に満ちた目と優しい笑顔。
夏生はそれらに魅せられながらワゴンカートを押し進めた。
「奥様お座り下さい。今用意致しますので」
窓の傍にある白い椅子に座るよう奥様に促し、食事をテーブルに広げる。
ここからなら、美しい庭園を眺めながら食事をとることができる。
出かけることの少ない奥方様への夏生のちょっとした気遣いであった。
「どうぞお召し上がり下さい」
「ありがとう」
奥様はにっこり微笑むとナイフとフォークを手に取った。
だが、何か考え込んだ様子でいっこうに食べようとしない。
「あの…何かお気に召さないものでもございましたか?もしそうならば…」
「んー気に入らないって訳じゃないけど…」
奥様はそう言いながらも少し困った様子で料理をじっと見つめている。
自分は何かまずいことでもしたのだろうか。
「夏生、朝食はもう食べて?」
「い、いえ…使用人達はいつもお二人が食べ終わってからで…」
それが主人に対する礼儀であり、それは夏生も同じであった。
だがそれの何が気にくわないのだろうか。
夏生は勇気を振り絞って訊いてみる。
「何か僕が奥様にとって悪いことをしたのでしょうか?」
「そうね…悪いことね」
夏生の質問にすぐ言葉を返す奥様。
しかし、それとは裏腹にいつもの笑顔を向ける奥様が夏生にはよく理解できなかった。
頭の中が真っ白になる夏生をよそに、奥様は話を続けた。
「この料理、私には少し量が多いのよ」
「へ?」
「私は朝は食欲がなくて、あまり食べられないの。だからせっかく夏生が持ってきてくれた料理を残すことになる。でもそれって夏生に対してすごく失礼でしょう?」
夏生は安堵と呆れの混ざったため息をついた。
全くこの御方は。
「奥様。僕は使用人です。ですから貴女様が食事をお残しになられても僕への失礼にはなりません」
「でも使用人への礼儀だって大切にしなければ」
きっぱり言いきる奥様に返す言葉がなくなってしまった夏生は少し困惑した様子で言った。
「では僕はどうすればよろしいでしょうか奥様」
「私と一緒に朝食を食べてくださらない?夏生」
にっこりと笑う奥様に夏生は一礼する。
「仰せのままに」

